○今回のポイント 1 「あるじ」を中心に家族が集まる家を考える
○今回のポイント 2 家に必要なのは人の心の動きに合わせた自由な空間
家族とはその自由な「間」の中で接しながら、さらにそれぞれのしたいことをし、自然や外界とも接し、深い思想をさらに高めて来たのです。数奇屋造りや茶室はそんな思想の中からさらに極め、生まれ育まれてきた和の文化です。昨今、各地で取りざたされている親子の問題、夫婦の問題、そして老人の問題、さらにはいじめなど、肝心要の生きる問題のすべては、開放的な住まいから今の住まいの形「壁の住まい」が原因ではないかと思えてなりません。
<白川郷唯一の暖房の囲炉裏(写真:天野彰)>
写真は、家族が合掌の一つ屋根の中で、一つの炉に暖められて住む、白川郷の合掌造りの家です。遠く江戸時代の生活を今に残しているのです。今はライトアップされ、妙に見世物化された賑やかな郷となっているものの消灯後の観光客が去った後の山村にはかつての静けさが戻り100年以上も前と同じ空気を吸うことができ心が洗われます。その合掌の多層空間の中で、家族がそれぞれ「間」と「場」を重んじ暮らしていたことが伺われるのです。
そこには統率されたルールがあり、「あるじ」の居場所を定め他の家族の場を決めているのです。「家相」はそのあるじの居場所から考えていたのです。そこが家の中心でもあり、象徴ともなるのです。それにより家族の求心力が生まれ、家族のそれぞれが自由に活躍できるのです
家・公共の施設も同様に、人が自然と集まる場をつくる
私はそれを住まいづくりに限らず、病院にも、公的な施設にも国際的なコミュニティ施設でもこの設計手法を取り入れ、確たる結束の家としているのです。

<青森市社会教育福祉センターの計画案(写真:天野彰)>
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 <UIAウイーン国際会議場コンペ応募案(写真:天野彰)> |
模型写真は「青森市社会教育福祉センターの計画案(生田勉氏共同設計)」と「UIAウイーン国際会議場コンペ応募案(鈴木エドワード氏などと共同(1969年)」です。
前者は若者、婦人、青年さらには老人が敷地の四方から 寄って来て真ん中のホールに集まり、コミュニケーションがまさに自然に“回転”する仕組みです。国連会議場の案は、世界の人々やあらゆる分野の人々の情報や知恵が回り込むようにやって来て、大きなコンベンションを回らせる。それこそ私が考えるベクトルでありモーメントでそれぞれのが“回る建物”と言えるのです。
<モーメントとベクトルで回る(雑誌抜粋:天野彰)>
その後こうした公共建築の設計チャンスにはなかなか恵まれませんでしたが、私は多くの住宅設計で住まいづくりのプランニングの手法としているのです。その中で住む家族がそれぞれどう動くか、どんなドラマを展開するのか?が大きな勉強と設計の楽しみとなりました。
家は個室や部屋の集まりではなく、もっと自由なコーナーのような、あるいは懐(ふところ)のような自由空間によって構成され、人の心と動きが何よりも優先されるものだと確信したのです。
次回のテーマはまず夫婦のことを考えるです。
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★次回お楽しみに♪
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