子育ての家(2) 6畳一間を3人の子ども部屋に?!
― 子どもには部屋を貸し与える? ―
○今回のポイント 1 数十年後に巣立つ子供に快適な部屋は必要なく、狭い中で工夫して生活させる
○今回のポイント 2 将来的に夫婦2人の生活を考え家を建てることが重要
子どもに部屋を貸す意識を持つ!
私は家づくりにおいて「子ども部屋は広く快適にしない」部屋は「子に貸す」意識を!と常々言っています。
これに対して「そこまで冷たくはしない」とか「自分が子どものころ苦労したから・・」あげくは「子どものために家を建てる」などと言う人もいます。
しかし、私が設計する家のプランには「子ども部屋」の記述がありません。あっても「予備室」か、ご主人の「書斎」か、奥さんの「家事室」です。そして「この部屋をお子さんたちに成長されるまで“貸して”あげて下さい」とお願いするのです。
建て主のほとんどは怪訝な顔をされるのですが、その結果「私の部屋」などと言うことや引きこもりなどと言うことにならなかったとか。子どもが進学や、結婚して出て行くと“貸して“あった部屋が空いて夫婦の「書斎」や「家事室」に戻って「なるほど!そうだったのか」と感心されるようです。
それも十数年経ったのちのお話しなのですが、長い人生から言えば子育て期など、あっという間のことで、しかもどなたも確実にそうなるのです。だったら「子どもたちを分けるだけではなく、密にくっついて住んだ方がいい!」と言うのが私の設計理念です。
貸す子供部屋は狭くする
その子どもに「貸し与える部屋」ですが、なにも広いものではありません。前回のように6畳の一間を二人の子どもに2段ベッドでテレコ凹凸に仕切ったり、なんと3人の子どもには折りたたみベッド付きの収納家具をつくって3つに仕切るアイディアなどです。
1DKの6畳ひと間を3つの折り畳みベッド付収納家具で仕切る(画:天野彰)
これなら2DKの狭い住まいでも子どもに部屋を“貸し与える”ことができます。これは実際に私自身が行なってきたことでもあるのですが・・・、親兄弟の息遣いを感じながらもプライバシーを守る。
子育て世帯は家を買えず、空家が増える悪循環をどう打破するか。
毎回こんなことをお話ししながら、せつなくも、大きな矛盾を感じるのです。国や社会は実際の若い「子育て世代」のことを本当にまじめに考えているだろうかと言うことです。統計データーではなるほど生活は豊かになり、各戸の床面積も充足されたように思えるのですが・・・、どっこい肝心のこの子育て世代の収入は限られ、共働きをしようにも安心して預けられる保育所もなく、二人の子どもを持てば共働きも難しくますます生活はきつくなるのです。原因はすべて家賃や家のコストなのですが、狭い家か、遠く通勤通学に不便な家に住むのです。
その一方で子育てが終わった世代は子どももいなく、都心の広い家で掃除もままならず“身を持て余し”高い税金や光熱費で“家を持て余す”老人ばかりとなり、いよいよ危険な「空家」となるのです。で、この朽ちた家を買いあさりさらに区分けして、劣悪な家を建て利を“獲”るビジネスに都市は蝕まれ地価だけが高騰し疲弊して行くのです。
これを少子高齢化社会などと言っている政治家の不様さで、「住宅政策」の無策や、行政の居住アイディアの無さが原因だと、いまだ誰も気が付かず、誰も望まない新市場や五輪開催の小さなイベントに執着いることです。
こうしている間も若い世代はますます子どもを産めなくなり、都市や国は自ら滅びて行くのです。その中で、「6畳一間」を健気にも3つに分け、3人の子どものプライバシーを守りながら、しかも子どもたちに大きな夢も与えるこんな「小さな6畳一間のリフォーム」例を紹介します。次回は子ども部屋と父の書斎です。
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