「家のチカラ」(3)住まいによって人生をも変える?!
― あのおそろしい津波と引き波の東日本震災の脅威からはや6年が経ち、未だに2500人を超す行方不明の方がおられ、原発被害などで避難生活をしておられる人も多いのです。こうした人々に希望の持てる未来ある家とは一体何かを改めて考えさせられます。心よりお祈り申し上げます。 ―
○今回のポイント 1 長年の家の形に捕らわれず、新しく建替えることで人生が変わる?
○今回のポイント 2 家は人生を育む場所
初めて住まいの設計のお手伝いをして50余年がたち、3000余軒を超す家づくりや多くの家族とのお付き合いから、家を建てて、まさしく人生までもが変わったとおっしゃる建て主や家族が多いことに驚きます。
家は財産である前にわが家族人生を育むところです。
たかが住まい、家を持つことは資産、財産づくりで、今や一戸どころか“一個いくら”となり下がっているような住まいですが・・・、忘れてはいけないことはそこに住む人や家族の人生があると言うことです。
奥様を亡くされポツンと家で過ごしていると言う友人を、リフォームでも勧めたらどうだろう?と紹介され、伺ってみると、なるほど暗くて異様な家のリビングで、奥さんがお元気の時そのままと思われる子どもを送り出した大きな家に、初老のご主人がおられた。
リフォームなどで、とても片付ける気力もないと言う…。そこで、
「思い切ってこの家を建て替えたらいかがですか?」 と提案したのです。
「えっ?」とばかりの顔をしておられていたご主人だが、友人や子どもたちにも勧められ、とにかく身一つでその家から出ることとあいなり、あれこれと片付ける必要もなくあっさりと解体し、建て替えることになったのです。
写真:思いきって建て替えた家(設計:天野彰)
今の家に左右されるより思い切って新天地をつくる!
友人によると、もともと芸達者でお付き合いの良い人らしく、これほどまでに落ち込むとはとても思えなかったと話す通り、設計の打ち合わせの後半にはかなり前向きとなられ、キッチンなどの住設の選定などでは積極的にショウルームに足を運び笑顔も見られるようになり、ついに竣工の席では得意のピアノの演奏をご披露されるほどになられていたのです。
そして新居の一年点検ごろにお邪魔してみるとなんとそこには新しい奥様の姿も見られ、見たこともないに明るい笑顔と笑い声が聞けたのです。
「いやー、家のパワーとはすごいものだねー」 と、ご満悦。
なるほどこれほどまでに家を建てることで劇的に人生が変わるとはさすがに思えなかったのですが・・・、考えてみればこのようなことと思われる建て主の変化が多いことも事実なのです。
写真:今の家をベースに実家に別荘代わりの木の家に建て替える(設計:天野彰)
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