コラム


住宅関連記事・ノウハウ

「ハウスネットギャラリー」より転載

建築家の役割(3)「真っ白のキャンバスに何から描く?」


○今回のポイント 1 施主に必要なことは、家づくりの知識を身につけること
○今回のポイント 2 最初は図面ではなく「場取り」から家づくりの理解を深める

 長い冬からやっと桜が咲き始め暖かみが増すころ窓を大きく開けて春の陽ざしを感じたくなる頃、改めて住まいの内と外とのつながりを感じます。都市での家づくりはこんな爽やかなイメージで開放的で、それでいてコンパクトな家をイメージするのです。

家づくりは最初が肝心!

 永年わたり住まいづくりのお手伝いをして来て家づくりのスタートでいつも感じることは、建主が更地を目の前にして、まるで画家が筆を持って真っ白のキャンバスに初めて線を引く瞬間のような、そんな心境を思い浮かべるのです。そこに図が描かれ、色が塗られ、果たしてその通りの立体的な家が描かれるのだろうかと、戸惑いながらも大いなる夢を抱いているのです。設計図の読み方も分からず、それをさらに立体的に描いて、かつ生活に合わせて時系列的に理解することはなかなか難しいものです。
これを設計者や施工者たちは当たり前のように、話を進めるのですが、建主にとってはそれも訳が分からず、動揺し既に“賭け”のような心境となっているのです。それを丸ごと購入したり、設計や施工の契約をすることなどまさに「清水の舞台から飛び降りる」がごとき心境でいるのです。
しかし、それを担う若い建築士やセールスマンたちは、建主がまさかこんな心境とは夢にも知らず家づくりをさっさと始め作業を押し進めてしまうのです。本来「ご一緒に考えて、いい家をつくりましょう」で、「僣越ですが、とにかく技術的なことは私たちに任せて、ご夫妻はどう住みたいか、どう暮らしたいかを考えて教えて下さい!」などの丁寧な説明と提案する気迫が必要なのです。

「場取り」で家づくりの手順など全てを理解する?

 筆者の家づくりでは、間取りの図をいきなり示すのではなく、南北を指し示した白い画用紙に、それぞれの大きさに切った円を並べ、まるでカードを切るように並べて、それを家族と一緒に移動させながら家の形をイメージしてもらうのです。まさに間ではない家族の居場所や何かをする場などの「場取り」をしてもらうのです。

<イラスト:真っ白な画用紙に「間取りピース」を並べる(画:天野彰)>
<イラスト:真っ白な画用紙に「間取りピース」を並べる(画:天野彰)>



 こうして設計のお話を進めて行くうち、プランも全員で理解し、家づくりの手順や項目や単価さえも、「ははーん、こんなことだったのか!」とか、おおよその面積に単価を掛けて壁や天井の仕上げ材のなどの予算さえ分かってくるようになるのです。すなわち、広さ、質、作業、養生、そして経費。皮肉 にも建物の完成間際には、設計者と施工者とのやり取りも分かってくるのです。こうして現場が進むと、空間も分かって来て、これは狭いとか、低いとか、もう気分はまるで建築家のようです。
こんな仕上げで良いだろうか?ここは手抜きではないか?などと、設計監理の担当者に競って指示や“監理”をしだすほどになるのです。 実際の施工の監理は既に基礎づくりから始まっているのですが、建て主が大工さんと一緒に建てている気分となっていることがとてもうれしいものです。あとは引き渡し前の完成チェックも一緒に行うのです。
しかし一般には車の売買のように新車の検査と同じ感覚で観て購入するような姿勢になってしまいます。しかし今まで建てて来たその家は手作りゆえの壁や天井には、むらや凹凸もあり、それがまた本物の味わいを醸しだしているのです。
まさに“世界にたった一つしかない建物”を建主が自分でつくり得た喜びです。これこそ私たち設計士が完成の安堵と幸せを覚える瞬間です。まさに建主がさらに良くしたいと願った真剣な想いの成果なのです。
「このスペースもったいないわ。収納にして!」「ここにあの絵を飾りこのチェストを置く!」「あそこに棚をつくって!」などなど、これによって自分たちに合った建物となるのです。それこそわが家を自分たちで創ったような気持ちになるのです。これはリフォームでも同じことです


次回からは「人生百歳の家」の話でもしましょう。



      次回は「真っ白なキャンバスに何から描く?」です。

******************************************************************************************************************

★毎週土曜日 最新コラム公開中!   お楽しみに♪

******************************************************************************************************************




【BACK NUMBER】
 建築家の役割(3)「真っ白のキャンバスに何から描く?」
建築家の役割(2)「夫婦の最大公約数の家?を探り出す」
建築家の役割(1)「今の家に本当の夫婦の顔を創るために?」
玄関は家族の顔(2)「今の家に夫婦の顔があるか?」
玄関は家族の顔(1)「明るい玄関には福が来る」
暖かい家(3)「もっと暖かい工夫を?ヒントは建具?」
暖かい家(2)「暖かい照明」
暖かい家(1) 「暖かいリビング」のプランニング
狭楽し収納法(6) 3LDKに7,000冊の本棚?押入れが大容量収納?
狭楽し収納法(5) 老いの生活には“ゴールデン収納”
狭楽し収納法(4) 表と裏(ハレとケ)の伝統文化収納
狭楽し収納法(3) 収納は多ければ多いほど無駄?“見える” 収納を
狭楽し収納法(2) 収納は形と場が大切!ポケット収納
狭楽し収納法(1) 無駄なモノを見つめて“仕舞う”
狭楽しさの手法(4)“暑楽”しい中にこそ日本の文化がある
狭楽しさの手法(3)“暑楽し”中庭セルフディフェンス・ハウス!
狭楽しさの手法(2)“暑楽”しさは遮蔽と断熱と通気!
狭楽しさの手法(1) 暑苦しさから逃れ“暑楽”しさの涼味?
人生百歳元気で快適に住む(4)「人口減少の今家で出来ること?」
人生百歳元気で快適に住む(3)「契約同居?のつくり方」
人生百歳元気で快適に住む(2)「何が必要か工夫?」
人生百歳元気で快適に住む(1)「今何が必要か?を考える」
愉しい家(6) もっと愉しく!空間を演出する!
愉しい家(5) 物と壁が動く“生活維持”収納ロボット?
愉しい家(4) 苦を楽に!空間の多重利用?
愉しい家(3) 苦を楽に!物をどうする?
愉しい家(2) 改めて“狭楽しさ”とは?
愉しい家(1) 狭くても楽しい家?“狭楽しく住む”とは
2Sハウス(6)老いて自立する家とは?
2Sハウス(5)老いて自立できる街や家の形とは?
2Sハウス(4)老いてわが身を自立サポートする家?
2Sハウス(3)地震災害に勝つ家とはハードだけか?
2Sハウス(2)安心の家とは何か・・・?
2Sハウス(1)二つのSとは何・・・?
いくつになっても住める家(5)街も家もそこに住む人しだい?
いくつになっても住める家(4)家は必要か?求められる家とは?
いくつになっても住める家(3)老いて活性できる不自由な家?
いくつになっても住める家(2)「夫婦の家」とは?
いくつになっても住める家(1)今なぜ50代云々が大流行?
家相が気になる?(5)まったく鬼門のない家?
家相が気になる?(4)今のプランを回転し鬼門を避ける?
家相が気になる?(3)家相の中心と張りと欠けとは?
家相が気になる?(2)家相はあえて生かす?
家相が気になる?(1)気にさせられる?
有効な家づくり(6)建築家と創るプランニング?
有効な家づくり(5)設計者を探す?
有効な家づくり(4)わが土地を探す?穴場は?
有効な家づくり(3)わが家に塾?趣味の店?で楽しく生きる
有効な家づくり(2)わが家のミニ開発?でわが身わが町を救う?
有効な家づくり(1)都市は拡大しそして空洞化する?
生かすか壊すか今の家?(6)ちょっとの減災意識で都市を救う?
生かすか壊すか今の家?(5)ちょっとの耐震強化で地震に勝つ
生かすか壊すか今の家?(4)50代 わが「先」を観てみる?
生かすか壊すか今の家?(3)まずは生活基盤と地盤を見る
生かすか壊すか今の家?(2)活きるためにちょっと辛口提言
生かすか壊すか今の家?(1)リフォームか建替えか?
リフォームで減災(5) 命を守るセルフデイフェンス?
リフォームで減災(4) 家を守るちょっとした耐震?
リフォームで減災(3) 身を守ることとは?
リフォームで減災(2) 大津波でもやればできる?
リフォームで減災(1) 今の家をどう守るか?
家相はどこまで従う(5) 設計教本ならどう従えばよい?
家相はどこまで従う(4) 家相はわが国伝統文化の継承?
家相はどこまで従う(3) 家相は科学?「良相の家」とは
家相はどこまで従う(2)「意外!家相で“経済封鎖”?」
家相はどこまで従う(1)「案じた瞬間に家相はある?」
夫婦の家(5)「も、少し色っぽくしては?!」
夫婦の家(4)「仲良し“夫婦書斎”と“夫/婦寝室”」
夫婦の家(3)「住まいは子育てではなく“夫婦”育て?」
夫婦の家(2)「狭いLDKを夫婦でどう分ける?」
夫婦の家(1)「LDKは夫婦の創造的な場?!」
同居は少子高齢化を救えるか?(5)子育て老いを安心「契約同居」
同居は少子高齢化を救えるか?(4)やりくりからくりどんでん返し
同居は少子高齢化を救えるか?(3)同居・近居・遠居の距離
同居は少子高齢化を救えるか?(2)親子安心“共働”住宅
同居は少子高齢化を救えるか?(1)メリットとデメリット
家づくりの方法(6)ライフステージは親と子を考える?
家づくりの方法(5)敷地に“テント”を張って住む?
家づくりの方法(4)そして夫婦のことを考える?
家づくりの方法(3)住まいの「あるじ」が求心力
家づくりの方法(2)プランニングは「場取り」?
家づくりの方法(1)それでも人は家を建てる!
夏を涼しく(4)涼しさとは物理学と心理学の結晶?
夏を涼しく(3)日本の家は光と風と時の平立断面の技
夏を涼しく(2)涼しさは科学、千年の知恵
夏を涼しく(1)京都は暑いが、なぜか涼しい?
収納は難しい?(6)物を家の中に入れない!玄関クロゼット
収納は難しい?(5)老いて安全で楽なゴールデン収納?
収納は難しい?(4)考え方次第!押入れを高収納に?
収納は難しい?(3)玄関と寝室のウォークインクロゼット
収納は難しい?(2)収納のコツは「ポケット収納」?
収納は難しい?(1)やっぱり収納は苦手?!
子育ての家(5) 子どもの部屋の活用は?
子育ての家(4) 机の配置一つで家族関係が変わる?!
子育ての家(3) 6畳一間を子ども部屋と父の書斎に?
子育ての家(2) 6畳一間を3人の子ども部屋に?!
子育ての家(1) 2段ベッドで2つの子ども部屋??
「家相」はあるか?(4) 家相にはどこまで従うか?
「家相」はあるか?(3)「家相」によって私も変わった?
「家相」はあるか?(2) 家相は家づくりの手引書?!
「家相」はあるか?(1)家相はあるのです!
「家のチカラ」(4)住まいによってボケない?!
「家のチカラ」(3)住まいによって人生をも変える?!
「家のチカラ」(2)住まいによって人格が変わる?!
「家のチカラ」(1)住まいによって社会が変わる?!
「木の住まい」が一番(5)木の家は基礎から再生(曳家)
「木の住まい」が一番(4)木の住まいの再生
「木の住まい」が一番(3)空家木の住まいが朽ちている!
「木の住まい」が一番(2)木は活きていて暖かい!
「木の住まい」が一番(1)木の薫りは人と地球を守る!
バスタイム(お湯)の“湯々”自適でよい年に!
悠々自適、いや灯りの演出で「“遊々”自適」でよい歳を
住まいの文化(6)食う寝るところ棲むところ
住まいの文化(5)千年の都市型自然住宅「町家」に学ぶ
住まいの文化(4)住まいは真の継承がされたか?
住まいの文化(3)利休は狭さのプロデューサー?
住まいの文化(2)日本は“せまい”の文化?
住まいの文化(1)四季の想いは?
災害に強い家(5)地震はやはり自分で守るしかない?
災害に強い家(4)減災は想像力?で
災害に強い家(3)減災の心で命を救う?
災害に強い家(2)出来るところから減災
災害に強い家(1)防災の前にまず減災の心を

天野彰のホームページを見る!