狭楽し収納法(3) 収納は多ければ多いほど無駄?“見える” 収納を
台風19号による豪雨や河川の氾濫などで被災され、今も避難生活をされておられる多くの方々に心よりお見舞いを申し上げます。― 天野彰
○今回のポイント 1 家づくりは収納に時間を取る必要はない
○今回のポイント 2 一時補完用のポケット収納が有効的
○今回のポイント 3 収納は出すことも考えた計画が重要
さて収納のお話ですが、いざリフォームや新築の設計となるとなぜか?「シューノー」「収納ー!」となり、しかもあれはここ、それはあそこ、と実に細かく分けその緻密さに驚くほどなのです。残念なことにそれが設計の打合せ時間の半分以上にもおよぶことも多く、もっと構造や材料、環境や断熱さらに安全防災やエルギーなどにもっと時間を割き、将来をどう暮らすか?などに知恵や予算を費やしたいと思うのです。
しかしこうしていざ引っ越してみると、どの収納に入れるのかを考える余裕もなく、その後の忙しい日常に追われて時間もなく、結局引っ越しで運んだままの段ボールがいつまでもその場や書斎などのテーブルに積まれていることが多いのです。
改めて現実の暮らしに本当に役立つ収納とは何かを考えてみると、やはり生活ごとのクロゼットやユーティリティーのような大雑把な物入がまさに一時置き場感覚のあの「ポケット収納」が重宝で心理的にも安らぐのかも知れません。
ここに段ボールを取りあえず積み上げて、のちに落ち着いたらゆっくり要不要を選別して整理するのです。
実は建て替えやリフォームなどの際、いったん家を空け物を運び出し、また新居に戻って帰る間の往復で大きく2度にわたり物の整理が行われ、多くの物が処分されるのです。さらにこの一次預かり所から各収納場所への片づけの際にもう一度整理を行うことができ、合計で3度の片づけができてかなり物が少なくなるのです。
「あら?意外に物が少なくて収納が余ってしまった?」などはよく耳にする話なのです。
こうしてこのポケット収納はまずは持ち込みの一時保管?場所であり、行き場不明の物や、季節毎の頂き物や雑誌新聞などを置く生活の“隠しポケット”ともなるのです。あちこちきっちり小分けしてある収納より、クロゼットのように中は扉を付けず剥き出しの棚やラック、ハンガーなどにランダムに置いたり掛けてある方が一目瞭然で分かり探しやすいのです。忙しい毎日物のために細かく神経質を遣い整理するなど人生の無駄遣いなのかも知れないのです。
ちなみに私の取りあえずのポケット収納とは大きめの食卓テーブルです?ここで原稿を書いたり、食事をしたりもしますが、物が溢れてきたら仕方なく片づけるのです。身近に資料があり安心で、楽で原稿も進むのですが・・・、やはり剥き出し過ぎて今にも本の山が崩れそうで「まるで物の中で食事をしているようだ」と家族には嫌われていますが・・・。
<写真1:テーブルの上の資料の山。ここでご飯も食べる?(画:天野彰)>
ともかく本来「収納」とは収めて納めるのです。しかし同時に出すことが重要なのです。その意味では「出納」が正しい?のです。なるほど役所や銀行の窓口のようですが、むしろ出すことを主とした効率の良さが優先なのです。収納はその納めた場所が常に目に触れることが一番なのです。
<右:天井までの収納棚開けると中がすべて見えて確認できる本棚 左:テーブルの後ろに取りあえずの剥き出しなんでも棚(写真・画:天野彰)>
この見える収納とはまずは棚を整然と置き、下から奥行きの深めな棚にし、そこは足が触れるので扉を付け。上の方の棚は物が落ちたり掃除もしにくいので扉を設けるのです。もちろん飾り棚のようにガラス戸でほこりを除けるなど極力見えるようにすることです。その意味で住まいの各生活のクロゼットは狭くても入れる部屋にして締りの良いドア一枚で仕切ってほこりを防ぎ、中はすべてオープンにすることが使いやすいのです。
<ウォーキング・クロゼットの片隅のポケット収納。(写真:天野彰)>
室内側にある収納もできるだけ塞がずに透明にして扉を極力避け何度もドアを開ける手間を無くし、やむなく扉を付ける時は写真のように床から天井までの高さにして一度開けたら中身がすべてが見えて常に確認ができるような工夫が大事です。
あのパタパタと扉を開けてモノを探す労力をなくすことがスマートな収納スタイルと言えるのです。次回はわが国の伝統の収納についてお話します。
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