狭楽しさの手法(4)“暑楽”しい中にこそ日本の文化がある
○今回のポイント 1 日本の家の課題は「夏をどう快適に過ごせる家」とするか
○今回のポイント 2 老後も考えた家づくりの秘訣は「小さな家」
前回この夏の暑さがあるゆえの“涼味”だとお話しましたが・・・。
まさしく亜熱帯モンスーンどころか年々熱帯モンスーンの猛暑となり、そのまま“熱い”台風の到来で台風一過の秋めいた青空などは昔の話で、台風一“禍”の猛暑が続く長い夏となっているようです。
とは言え、湿気で暑いこの季節を味わいわが国独特の夏の風雅があり、しかも農作物の植え付けの時期をも図っていた季節でもあるのです。それがわが国の文化であり、繁栄と人知のもとともなっているのです。あの漆の樹液を使って、この湿気でこそ乾く永遠の光沢の美を持つ漆塗り器を生み出し、それこそがわが国独特の塗装「ジャパン」で、「ジャパニング」と呼ばれる技ともなっているのです。
<夏と冬の装いの日本の家(画:天野彰)>
こうしてわが国の湿気の多い暑い夏を旨とすべし!などと言いながら・・・、改めてわが国の家々を観てみると・・・、どの家もそんな気候の変化などどうでもいいような家ばかりで驚くばかりです。
まさに断熱と気密性の高い?ベニヤ板とスレートなどのサイディングの全天候型の箱の家となっているのです。柱と屋根だけのわが国の「傘の家」がどうしてこうも、つるッとした扁平な「壁の家」となってしまったかと不思議です。もしこのありさまを兼好法師が観たらどう言うか?
しかし暑さの違いはあっても多湿の日本の夏は皆同じで、今も昔もそこで人は同じように暮らしているのです。この当たり前のようなことが長年受け継がれ人々の生活は何も変わっていないのです。人々はその中で家を建て、そして工夫をしてきたのです。
中でも「夏を過ごす」ことだけは大きな課題であり、それは「科学」であり、「物理」でもあり、生きるための「生理」であり「心理」でもあると分かっていたのです。
<四季を感じられるひまわりの家(設計:天野彰)>
その先人の知恵をメーカーや設計者に任せず、自分自身で自分なりの暮らしを想像してみるのです。地震も台風もさらには火災に見舞われるかもしれません。自分の家は自分で創り、自分で守ることです。こうしてちょっと自身で工夫して、自然に「夏を快適に過ごそう!」と考えるのです。すると古人の知恵や暮らしが見えて来て「文化」が見えてくるはずです。
その気持ちだけで、この先電気が停まり、年老いて一人になったときのことを考えることにもなるのです。これから暮らしていく私たちの家はどうあるべきか、現代の家探し、家づくりそしてリフォーム計画も変わってくるはずです。それこそ頑丈でメンテナンスのいらない「小さな家」そう、狭くても楽しい、夏も「暑楽しい家」なのです。
<四季と災害を考え回転し、いざとなると敷地に沈み込む家(画:天野彰)>
いよいよ秋到来か?次回からは改めて効果的な収納のお話しを。
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