狭楽しさの手法(3)“暑楽し”中庭セルフディフェンス・ハウス!
―暑い中でこそ涼しさを味わう“涼味”とは、実は単に感性の問題ではなく長い間の蒸し暑い夏に培われた科学なのです。それは極めて突き詰められた物理学的で生理学的で幾何学的な手法に基づいているのです。が、それこそが「夏を旨とすべし・・・」のわが国の文化となるのです。―
○今回のポイント 1 日本の蒸し暑い気候で快適に暮らす秘訣は、昔ながらの「町家」の工夫
○今回のポイント 2 中庭によって、光と風を自然に呼び込む住まいを実現する
日本特有のモンスーンの蒸し暑さ、しかも高気圧に囲まれて比較的カラッとした暑さと、今日のような前線による蒸し暑さがあるのです。わが国特有の地形が加わります。あの日本列島を縦走する山脈です。南の海を迎え見るような都市ができます。これが大阪をはじめ名古屋、東京などのメガロポリスと言われる都市群なのです。そこに産業が生まれ、文化が育ち政治の中枢も生まれたのです。
最近の夏の住み難さ、さらには災害の発生の危険、毎年繰り返されるようになったあの九州北部の線状豪雨などはまさしく温暖化の現象で地球規模での人類の大問題ですが、毎年夏の都市部に起こるゲリラ豪雨などはまさしく建築的、都市計画的な原因とも言えるのです。
まさに農村や地方にあった、民家をそのまま都市に押し込め密集した“田舎の家”“田園都市”の発想でまさしくその家の本質は“田舎の屋敷”の持ち家志向なのです。今に次々建つ近代的なマンションも湾岸のタワーマンションも本質的には持ち家?を積み上げただけのものと言えるのです。あの欧州のプラッツァや市場を囲んで出来た集合住宅とは本質的に異なります。まさに大陸の狭間にいて城壁の中につくられた城塞都市の集合住宅でそこに否が応でもコミュニティ文化も生まれたものです。
そこで改めて京都も見て観ると、まさに都市計画で碁盤の目に区画された通りや小路に囲まれた都市住宅の発想のあの「町家」のなのです。
そこに木造ながら密集するための防火対策や通気や採光のための植栽や通り庭さらには切通しなどの工夫でその街並みや合理的なプラン展開は、わが国独自の“住まい科学”なのです。それが今の京都の風情ともなっているのです。
古来わが国の家やさらに、今に残る古民家や桂離宮や伽藍の平面図が生まれている。雁行する平面は、まさに光と風を呼び込み、時とともに移り変わる四季を楽しむもので、都市の中の町家は植栽(中庭)をつくり単に家の中で楽しむ庭ばかりではなく、光と風を呼び込む立体的“技”の都市型住宅で月や雪など四季の情景を楽しむ小宇宙なのです。
木造でありながら周囲をコンクリートやブロックで防護しその内側は中庭を囲んだ木の家にする・・・私の「セルフディフェンス・ハウス」の発想です。実際はこの通りの形状にならずともこの概念で設計するのです。
<セルフディフェンスの家(画:天野彰)>
<暑いが涼しげな京の町家の風情(天野彰)>
そこに狭くても楽しい住まいと生活。「光」と「風」と「時」であり、四季折々の朝な夕なの情景を織りなし、優しい人間性を育むことと思うのです。
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