狭楽しさの手法(2)“暑楽”しさは遮蔽と断熱と通気!
○今回のポイント 1 日本は家の中に風を通す工夫が必要、暑さと湿気を風で外へ流すことが重要
○今回のポイント 2 日本の深い庇は日差し除けのため、間仕切りは襖にすることで家全体に風を通す
○今回のポイント 3 土壁は湿気対策のために珪藻土を使い湿度を逃がす役割
えッ?と思われるかも知れませんが・・・私の設計手法は必要な断熱も高気密にもしますが、その前になによりも通気を最優先します。それはプランニングはもちろんのこと各断面床下屋根を含めた立体的なことまでです。
なぜならわが国の住まいはあくまでも「夏を旨とすべし」だからです。まさしく人が住むための“場”づくりです。それは暑さはもちろんのこと湿気を嫌うことです。
なんて言うことはありません。昔からの家の形を見れば良いのです。そのためにはまずは日除けをつくり日射しを除けるのです。そのため日本の家は庇が深いのです。それは雨、露を防ぐばかりでなく、風を呼び込むのです。室内側の間仕切りも壁ではなくすべて襖や障子の建具で、夏場にはすべて簀戸に変えて風を通すのです。しかも高床にして床下で湿気を追い出し蒸し暑さを防ぐのです。
<昔の住まいの原点高下駄の“葦の丸屋”(画:天野彰)>
陽の当たる壁には土壁を厚く塗りさらに漆喰や珪藻土で仕上げていたのです。漆喰はその白さで陽ざしを反射しその素材の持つ調湿性で湿気を吐き出しまさに蒸発潜熱で壁を冷やすと言う優れものです。最近では見られなくなったたらいに浸した水とタオルでスイカを冷やしたあの情景の原理です。
<浸したタオルで冷えるスイカとトマト(写真:天野彰)>
西日を防ぐために植栽を施し、開口部は簾で直射を防ぐのです。従って窓は極力大きく風通しを良くしながら安全な連子格子や蔀戸で守るのです。これらは敷地の狭い都市部では風通しも悪く隣のエアコンの室外機の排熱で熱せられとても無理のようですが、先の京都の町家すなわち中庭式のコートハウス状にするだけでずいぶん涼しく安全に過ごせるのです。
<日射を避け、風を呼び込む簀戸の京都の家(写真:天野彰)>
実際に風通しとたらいとスイカの原理で断熱のない古い工場のスレート屋根の上に軽い簾を竹と縄で組みその下を棟に設置した穴開きパイプからの噴水で冷やし、ずいぶん涼しくしてよろこばれたものです。実際今でも屋根や屋上にこうした簾を敷きつめたり西日の当たる壁を板や日除けのシェードや外付けブラインドなどのインターフェースで覆うだけで遮熱効果は抜群となり夜まで室内で熱を帯びることはないのです。ただしいずれも台風や防火のための工夫が必要となります。
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