○今回のポイント 1 防災・減災はちょっとした心がけとわずかな費用でもできる
○今回のポイント 2 まずは、家がある土地の地盤の状態を知ることが大切
○今回のポイント 3 「もう一重の鉄筋の基礎を造る」など地盤に合わせた防災対策がある
東日本大震災以来、熊本などあちこちで地震の揺れが人々を驚かしています。阪神大地震のあの都市の悲惨な震災からあっという間に21年が過ぎ去りました。その後の驚くべき大津波と時間差の大地震でした。あの大津波は不可抗力としても、直下型の阪神淡路大震災での貴重な教訓は生かされていたのでしょうか?

地盤から崩れた家
一時期その発生が懸念されていた東海地震や東南海・南海地震の巨大地震について、政府の中央防災会議(当時小泉純一郎会長)がその規模は桁違いのもので、しかも明日来てもおかしくないと言うものです。
それがなんと宮城沖どころか三陸沖全体の東日本大震災の大災害となってしまったのです。しかも東海地震とは全く別のものと言う。従ってこうした視点で見ると、東海関連の巨大地震の確率はまだまだ高いままと言うことなのです。
連日テレビの実況で悲惨な惨状を目の当たりにし、さらに各局で大地震の災害のシミュレーションを放映してもなぜか、相変わらずあれは“対岸の火事”か?あるいはもしあのような地震が来たら、もう“あきらめるしかない”などと開き直ってしまっている人も多いようです。
とんでもないことです。防災はそこに住む人のちょっとした心がけ次第で、しかもわずかな費用で耐震補強もでき、家族の命を守ることもできるのです。まずは減災を考えるのです。
前回お話した、あのガレージの角の柱が一本だけだったバランスの悪い家はことごとく柱が折れたり、なんと!柱が柱に食い込むように突き刺さって新築間もない家の2階が落ちていたのです。この補強でも案外簡単にできるのです。その辺りに筋交いのある壁を足したり、イラストのように2本の補強柱で今の通し柱を抱くなど、まさしく“三本の矢”のような補強で家は数倍強くなるのです。

2本の柱で今の通し柱を抱いて“三本の矢”の補強
熊本大分地震、阪神・淡路地震にしてもあの恐怖の揺れの体験と、長く続く余震による避難生活の不安や不自由さ、そしてその建て替えや修復予算の多額の出費を迫られ、ついにはその街と家を捨てた人も多いのです。
今その都市直下型の阪神大地震の犠牲者の多くは圧死と類焼火災により、後の東日本大震災は巨大津波でした。そこでわが家が建っている街やその位置、そしてその地盤がどの部分に相当するかを知ることが大切なのです。

地盤によって揺れ方が違う(画:天野彰)
その方法は、各市町村にあるハザードマップ、さらには海抜を示した地形図を入手し、新興宅地であれば申請に使った造成図などを見せてもらうか、担当した施工者や役所に問い合わせることが手っ取り早いのです。
さらに造成が古い宅地の場合ではその団地や敷地周辺を散歩しながら、やや離れた対面の高台などから眺めて見ます、もとの山(地山)や原野の成りがおぼろげながら見えてわが家が削られたところか土盛りされたところかなどが分かります。古くから住んでいる人の話などを聞いて地盤の形成の歴史を探ることもできます。
地盤そのものが地震に対して不安な場合は、まずよう壁を見て、ひび割れていればやり直し、さらに家本体の足回りが心配なら従来の無筋であった基礎の内側にぐるりと鉄筋入りの二重の基礎を造ることもできます。(イラスト)しかし地盤そのものが隣地や道路から下がっていて水はけもできないなどでは家が腐りやすく危険です。湿気やカビで健康にも良くありません。

無筋の基礎にもう一重の鉄筋の基礎をつくる(画:天野彰)
思い切って今の家を壊して杭を打ったり新たな土を加えて顛圧(てんあつ)し、地盤にモルタルや石灰などを注入し地盤改良した上で建て替えるか、敷地に余裕があれば曳家やジャッキアップ(写真)によって、新たな高基礎を造り元に戻すのです。

ジャッキアップと曳家で新たな高基礎をつくる(天野彰撮影)
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